塑性加工における材料-潤滑油-工具界面のトライボロジー挙動は、塑性加工の成否に大きく影響する重要な現象である。この現象を明らかにすることにより、現在大きな問題となっている加工表面品質や工具寿命などを制御することが可能となる。特に、摩擦界面における微視的な接触状況を定量的に理解し、潤滑機構を明確に検証することが現在非常に望まれている。すでに引抜きや据え込みにおいては、透明なガラスのダイを使用して加工中の潤滑油の微視的な接触状況を直接観察することが可能である。しかし、圧延加工においてロールと材料界面を直接観察することは物理的に困難である。 そこで本研究では、圧延加工における微視的な接触状況を定量的に観察できる新たな手法として蛍光法(潤滑油に蛍光物質を添加し蛍光顕微鏡により蛍光物質の挙動を観察する方法)を導入した。そして、圧延速度、潤滑油粘度、供試材の表面粗さなどのトライボロジー因子を変化させて圧延加工を行い、それぞれのトライボロジー因子が微視的な接触状況に及ぼす影響を検証して以下の知見を得た。 1.圧延加工における微視的な接触状況を直接観察する方法として蛍光性は有効である。 2.潤滑油の人口油膜厚さの計算結果と蛍光写真の潤滑油量との間には定性的な関係が認められる。 3.ニート潤滑とエマルジョン潤滑の入口油膜厚さは潤滑油粘度が増加するにつれてエマルション潤滑において著しく少なくなる。 エマルジョン潤滑において高粘度ベース油では潤滑油の存在形態にムラが確認できた。
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