金属/半導体系における界面の形成過程や原子レベルの構造を理解することは、半導体テクノロジー分野での技術改良の点で大変重要である。それ故、この種の界面の研究はここ10年巾広くなされてきている。しかし、上記の系の「半導体」を「化合物半導体」に置き換えてみると、それに関する研究がほとんどなされていないのが分かる。 本研究では、金属/化合物半導体系としてSn/InSb(111)Aを選び、その界面系のごく初期を走査トンネル顕微鏡法(STM)を用いて調べた。この系については、今までに反射高速電子回折(RHEED)法、あるいはDV-Xα法という分子軌道計算による研究がなされてきている。しかしながら、Snが基板であるInSb(111)A-2x2表面上のどこに吸着するのかという問いに対しては、STMのような実空間での直接観察法を用いての答えは今までなされないでいた。 Sn吸着のための基板であるInSb(111)Aの2x2表面は、約460℃でのアニールにより清浄化された。STM観察の結果、この(111)A-2x2表面は従来報告されているIn-vacancy buckling構造を持つことが確認できた。たとえば、高バイアス下での観察ではIn-vacancybuckling構造を持つことが確認できた。たとえば、高バイアス下での観察ではIn-vacancy近くの第二層を構成するSbの孤立電子対に対応する像が、また低バイアス下では最表面のInと第二層目のSbがつくる結合性軌道に起因する像が見えた。時折、[112]あるいは[112]方向に垂直な2原子層ステップの存在も観察でき、またこれらの像は電子計数モデルで合理的に解釈できた。 最後に、InSb(111)A-2x2上ではSnは、次の3つの吸着サイト、すなわち、In-vacancy、第二層のSb、最表面のInの直上のそれぞれ真上のサイトに吸着することが分かった。特にSnは、In-vacancyサイト上に最も頻度高く吸着することが明らかとなった。
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