溶融金属へのガス吹き込みは、金属精錬における多くのプロセスで行われている重要な操作であり、その精錬特性を明確にするためには溶融金属自由表面の波動および流動特性を把握する必要がある。この観点から本研究では水モデル実験系を用いて液面の変動および液流速の測定を行い、その結果を表現し得る数値シミュレーションモデルを開発することを目的とした。 平成6年度は以下のような研究を行った。 1.液自由表面の波動観察:透明アクリル製水槽内の水中に槽底部から窒素ガスを吹き込んで液を攪拌する。この時の液自由表面の波立ちの様子をビデオカメラで撮影し、得られた1/30秒毎の映像から液面の形状を測定し、これより、液面の平均形状、変動振幅、変動周波数、液面上下動の速度等の情報を種々のガス流量と装置条件で測定した。また液中に吹き込まれた気泡の観察も行い、気泡頻度と液面変動周波数との対応を調べた。 2.乱流計測:東北大学素材工学研究所のレーザードップラー流速計を用い、水槽内の各位置で乱流計測を行った。その結果乱流変動速度は槽内の位置で大きく変化し、気泡分散域に近く液自由表面に近いほど大きくなった。また変動速度のガス流量依存性は流速の大きい場所ほど大きくなることが分かった。さらに現有の熱フィルム流速計の測定結果と比較すると、変動速度のレベルが数倍高く、熱フィルム流速計による測定法の問題点が指摘された。 3.乱流のシミュレーションモデルの開発:申請者らが提案した気泡分散モデルを、最も普及した乱流モデルであるk-εモデルと組み合わせたハイブリッドモデルをワークステーションを用いて開発中である。一部の計算結果は上記の流速測定結果と良く一致したが、不一致の点もあり今後の詳細な検討が必要である。
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