金属などの素材の新しい超高純度精製法の基礎を確立するために、まずレーザー光と原子ビームとの相互作用に基づく運動量制御法の開発を目指している。そのため、現在装置の試作を行った。装置は、レーザー光源と超高真空装置から成っている。前年度までに、超高真空装置の真空度として10^<-10>Torrが得られているが、本年度はさらに真空系の改良を行い、10^<-11>Torr台を達成した。ただし、この値は現有の測定機器の限界であって、実際にはこれ以下の真空度が達成されているものと考えている。 レーザー光源には小型で簡便、安価な半導体レーザーを用いる予定であるが、本研究に用いるために求められる性能として、以下の点を挙げることができる。すなわち、(1)100kHz程度の狭いスペクトル幅、(2)高い安定度、(3)速い周波数掃引である。前年度までは安定化を進めるためにレーザーの外部にコンフォーカルファブリペロ-型干渉計を置き、その反射光をレーザーに光帰還する実験を行った。その結果、発振周波数の大幅な掃引が実現されたが、周波数掃引の際にモードホッピングと呼ばれる現象が発生したため、スムーズな掃引が難しかった。そこで、回折格子による光フィードバック法を用いたところ、極めて広範囲でスムーズな周波数掃引が実現された。 以上と平行して、究極の高純度化とも言える新しい同位体分離法の研究も行った。これは光誘導ドリフトに基づく分離法である。本研究においては、光誘導ドリフトを行うための実験装置の設計試作とレーザー光源の準備を行った。さらに、バッファガス圧力やレーザー光波長、強度などのパラメータに対する、ルビジウム原子の密度分布測定を行った。その結果、バックポンピング法によって極めて顕著なドリフト現象が観測され、高効率な同位体分離が生じていることが示唆された。
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