現在得られているMnS-SiO_2系融体中へのMnSの溶解度を出発点とし、化学平衡法によりMnO-SiO_2-MnS系融体の状態図の測定を行った。まず、1523、1623、1723KにおいてMnO、MnS、SiO_2、2MnO・SiO_2等の化合物の飽和溶解度線を求めた。次に、得られた各飽和相の溶解度線を総合し、2相飽和の組織の温度による軌跡からMnO-SiO_2-MnS系の状態図をほぼ完成した。実験終了後のフラックスの飽和相の確認はX線回折で確認を行い、本研究費で購入した示差熱分析装置を用いた実験も行い、予測された温度での相変化の確認を現在測定中である。MnSの溶解度はMnO濃度の増加とともに大きくなった。これは介在物中のMnO濃度の増加によりMnSの析出量が増えるとする知見をよく説明している。また、本系フラックス中へのMnSの溶解度はCaO-SiO_2系フラックス中へのCaSの溶解度やBaO-SiO_2系フラックス中へのBaSの溶解度に比べ非常に大きく、このことからも鋼の凝固過程で多くの硫化物を酸化物中に析出させるためにはMnSが最も適している硫化物であることがわかる。1523Kにおいては今まで全く報告のないMnO-SiO_2-MnS3元化合物の存在を確認し、DTA等の測定結果から1400K付近でMnOと液相との包晶反応で生成することを推察した。また、本系フラックスのSiO_2をTiO_2で置換した場合、TiO_2濃度の上昇にともない、MnSの溶解度は向上した。このことから、鋼のチタンマンガン脱酸で生成するTiOx-MnO系介在物はオキサイドメタラジ-の核生成サイトとしてより適していることが判明した。
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