研究概要 |
今年度の実験における目標は、ラム加速できるモードでの燃焼をさせる条件を探すことであった.本年度行った実験は次のようである.(1)ダンプタンクを飛翔体発射装置とラム加速管との間に挿入して,ラム加速管内への駆動ガスの侵入を完全に防いだ.(2)飛翔体の飛行時の様子をシュリーレン写真で撮影できた.(3)ラム加速管に非燃焼ガスを入れたコールドショットで衝撃波の様子などを観測し,ラム加速管内に入れる混合気は比熱比が小さく分子量の大きな気体が良いことがわかった.(4)ラム加速管に可燃性混合気を入れたホットショットではエタン-酸素-二酸化炭素混合気及びメタン-プロパン-酸素-二酸化炭素混合気でラム加速できるモードでの燃焼と考えられる状態を実現できた.これまでの実験から、このように飛行速度がCJデトネーション速度より小さい場合には,燃焼を安定に保持できる範囲はかなり小さいものと考えられる。 我々の装置は飛翔体周りの流れ場を可視化できる世界で唯一のラム加速装置で,またすでにラム加速モードの燃焼を実現できていることから,国際的に注目されている.この可視化の利点を生かして数値シミュレーションとの比較は絶対的に重要である.現在までに,二次元空間ではあるが,極めて高い空間的・時間的分解能で,燃焼反応する非定常超音速/亜音速圧縮性流体のダイレクト数値シミュレーションが可能な計算プログラムを完成させた.そして,コールドショットに対応する計算を行い,実験との良い一致を見た.本年度の到達目標として点火から安定な燃焼モードが形成されるプロセスを計算して実験を支えようとしたが,そのような燃焼モードを実現できず,次年度の課題となった.さらに今後,炭化水素の燃焼の動力学の改良とサボの運動を解く計算プログラムを付け加えることが必要であろう.
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