研究概要 |
ラム加速装置は経済的に飛翔体を加速できる固定装置で,高速燃焼などの基礎的実験装置としても可能性が期待されている。本研究で我々はこの実用化のためにはその基礎的データが必要であるという観点から,これまでに飛翔体周りの流れ場を可視化できるという特徴を持つ世界で唯一の小型ラム加速装置を政策し,その作動をめざして実験してきた。またあわせて矩形断面形状をした本装置の持つ2次元性を利用して数値計算と比較検討できるように数値シミュレーションコードを開発してきた。 ラム加速装置は運転開始の条件が特にきびしく,実験でも数値シミュレーションでもこの点に大きな問題が有ることが明確になった。実用化を考えるとこの始動過程を明らかにして,容易に運転が開始できるようにする方法を開発する必要がある。 本年度の研究はこの本装置のネックとなる部分に力点を置いてすすめられた。比較的低速度から加速するためには,燃焼による発熱でチョークさせて飛翔体後方に火炎を保持する必要があることが明らかになり,そのための装置における工夫が種々試みられた。また数値計算においてもこの非定常過程をシミュレートできるよう,飛翔体周りだけでなくそれと独立に運動する点火用サボ周りの流れも解く計算プログラムを開発して,実験をサポートした。 その結果,ラム加速管内の可燃性混合気としてメタン-酸素-二酸化炭素混合気を用いることによって始動が比較的容易であることがわかった。しかしこの過程ではデトネーションが生じにくいことと,着火しやすいことという背反する性質を持つ混合気が要求されるため,混合気の組成,飛翔体の初期速度などの組み合わせが微妙で再現生が良くない。確実な実験方法の開発がまだ課題として残された。
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