本研究では、鉛直下向き揚力を発生する翼は造波抵抗を軽減ないしはゼロにするという、これまで行なった実験結果の結論を境界要素法に基づく数値計算によって検証し、造波抵抗の主な発生場所である実用船型の船首近傍に鉛直下向き揚力を発生する翼を取り付けることによって、造波抵抗の軽減が実現できることを調査した。 まず、鉛直下向き揚力を発生する翼付き没水船まわりの流れの計算に本研究で拡張改編した境界要素計算プログラムを適用して、翼の揚力変化が造波抵抗に及ぼす影響を調査実験結果と比較検討した。境界要素法の計算には三角形パネル内で1次の内挿関数を用いて、速度ポテンシャルを求める直接法を用いた。翼後縁ではクッタの条件を満たすためのパネルを付加した。翼形状およびアスペクト比や翼取り付け位置について検討し、鉛直下向きの揚力が造波抵抗を軽減させることを確認した。 続いて、実用船型の水線面近傍に取り付けた翼の造波抵抗軽減効果を計算および実験により調査した。数値計算にはランキンソース法を用い翼は揚力線で近似した数値計算法を用いた。まず計算法の妥当性を検討するため、シリーズ60船型および数種の実用コンテナ船型について実験から得られた波高、造波抵抗を計算結果と比較し、本数値計算の有用性を確めた。続いて、翼の位置と揚力の大きさが波と造波抵抗に及ぼす影響を調査し、適切な位置に翼を設置することにより、造波抵抗を軽減させることが判明した。さらに、船首、船尾では鉛直上向き揚力を発生する翼が造波抵抗を軽減することも判明した。
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