研究概要 |
接着継手は,溶接継手に比べて強度が低く,ばらつきが大きく,耐久性が保証されないので,鋼構造物の建造に接着継手を利用することは考えにくいが,接着面積を大きくでき,かつ一時的に使用するものであれば,鋼材にも接着継手が利用できると考えられる。 本研究ではそのような用途として,構造ブロックの運搬に用いる吊環を取り上げ,接着継手の適用の可能性を検討した。吊環に接着継手を用いる場合,大きい面積が必要である。しかし,接着面積が大きくなると,接着面内に欠陥が生じる可能性が高くなる。このため,無欠陥継手の接着強度とともに,欠陥をもつ接着継手強度を明らかにしておく必要がある。本研究では線形破壊力学に基づいて,欠陥を有する接着継手の強度評価法について検討を行った。結果の要約は次のようである。 1)無欠陥のエポキシ樹脂系の接着継手では,接着層に比べて接着面の剥離強度の方が強い。また破壊荷重と接着面積は比例関係にある。 2)接着継手に存在する欠陥は亀裂とみなして,線形破壊力学に基づく応力拡大係数を用いた強度評価が可能である。 3)実験結果をもとに,エポキシ樹脂系接着継手に貫通欠陥を有するモデルに対して,応力拡大係数の評価式を示した。 4)接着による吊環の実用化には,接着層に含まれる複数欠陥の強度評価法と,欠陥の非破壊検査法の確立が重要であることを明らかにした。
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