密度流を発生させる実験水路としては、2種類のものを作成した。1つは塩水くさびを発生させるものである。他は完全な2層流を発生させる水路である。前者は、下流側タンクに海水を導入して一定の高さの境界層まで海水層が上昇するように工夫した。水路底はかなりの勾配をもたせて不等流が発生するようにしている。そこで上流側から淡水を流下させて、水路下流側に塩水くさびを作り出せるようにしている。後者は、ほぼ水平な水路に水位が一定に保てるように円筒の噴水吐を設け、定常流を上流から流下させる。下流側タンクに海水を導入して、堰上げ板によって海水層が水路底よりも高くなるように設定する。水路底を流れに逆らって逆流して上流タンクまで到達し、上流側タンクに海水が貯留されるようになる。これを排水管で適当な量を抜いてやれば、下層は上流側に向かって流れる塩水層、上層は下流に向かって流れる淡水層となる完全な2層流が発生する。 水路への流出入は、パイプでつながっているために、超音波流量計によって、正確に計測することが可能である。流入量は水道水であるために大きな変化を与えられないが、海水の方は変化させることが出来た。水路内の流況は複雑であるために、ビデオによって記録し、インターフェイスボードを通してパソコンに取り込むように工夫している。一方、計算機の機能も大きく進歩し、比較的安価なスーパーパソコンでも、このように複雑な密度流の計算が可能になってきた。また、格子形成法やCIP法といった優れた計算schemeも開発され、大きな展望がもてるようになってきた。ここでの結果では十分に安定した成果を生み出すまでにはまた至っていないが、基礎的なツールは整ったと考えている。数値シミュレーションとビデオで取り込んだ密度流現象の画像をリンクして研究を進められるようになった。
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