平成6年度の研究実施計画に従って行われた研究の実績概要は、次のように要約される。 1.特に逆流、すなわち波向と流れ方向とが相反する共存場の場合、浅海波領域の水面波形はストークスの第二次近似波とよく一致した。 2.順流、すなわち波向と流れ方向とが一致する共存場の場合、水平方向の定常流れ成分(時間平均流速成分)は、流れのみの場合に比べて水路上層部で減少し、逆にその底層部で増加した。このような傾向は、波高の増加に伴って強く現れた。また、平均底面セン断応力も波高の増加に伴って大きくなる傾向が見られた。 3.逆流の共存場の場合、水平方向の定常流れ成分は、流れのみの場合に比べて水路上層部で増加し、その下層部で減少した。このような傾向も波高の増加に伴って強く現れた。また、平均底面セン断応力は波高の増加に伴って小さくなる傾向が見られた。 4.順流の共存場の場合、水平方向の周期流れ成分(アンサンブル平均流速成分)は、波形の山の位相で最大となり、逆にその谷の位相で最小となった。一方、逆流の共存場における水平方向の周期流れ成分と波形の位相との関係は、順流の共存場の場合のそれと逆の傾向となった。さらに、底面セン断応力及び摩擦速度も、周期流れ成分の変動に応じて変化した。 5.順流と逆流の共存場における水平及び鉛直方向の流速スペクトルの卓越周波数は、波形スペクトルのそれとほぼ一致した。しかし、水平方向の流速スペクトルの鉛直分布と鉛直方向のそれとは、波の流れとの相互作用の異方性を反映し、異なった分布となった。
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