平成8年度の研究実績は、以下のように要約される。 1.底面境界層及びその近辺における3層渦動粘性係数モデルを設定し、波・流れ共存場の定常流成分の理論的解析を行うと同時に、その算定方法について検討した。その結果、定常成分の解析値とその実験値は、概ね一致し、理論的解析値とその算定方法の合理性及び有用性が検証された。 2.波動境界層内における渦動粘性係数分布を二次曲線近似し、さらにそれ以上では一定値とする2層渦動係数モデルを設定し、波・流れ共存場の波動流成分の理論的解析値を得た。理論的解析値は実験値を概ね近似し、理論的解析値の合理性が確認された。 3.定常流成分及び波動流成分の理論的解析値に基づき、セン断応力の解析値が得られた。その結果、波・流れ共存場における底面セン断応力の位相に伴う変動傾向や波による影響の重大性が明らかにされた。 4.波動境界層内の波動流成分と波動境界層外のそれとの位相差は、底面で最大となり、特に今回の実験条件下では、その最大値は40°〜48°の範囲にあった。また、その位相差は底面から離れるに伴い急減し、境界層付近でほぼ0°となった。 5.今回の実験条件下では波・流れの共存場における底質の巻き上げ率は、流れのみの場合のそれに比べて約数10%程度増大した。また、流れを一定にし、波高を変化させた場合の底質の巻き上げ率の変化は、波高を一定にし、流れを変化させた場合のそれに比べて大きかった。
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