| 研究概要 |
本研究は,人間が2つのセンサ(耳)を用いて行っている高度な空間選択性を利用して,良好な聞こえを実現することができる補聴システムを開発することを目的として行われたものである.これまで,補聴器を耳装用の効果は少ないとされてきた聴力レベルが左右でかなり異なる場合でも,リクルートメント特性を正確に補償することで,両耳相互作用による空間選択特性を期待することができる.
そこで,まず平成6年度では,リクルートメント補償型ディジタル補聴器を2チャネル化するためのアルゴリズムの検討と,両耳相互作用の心理物理学的な測定方法に関する基礎的な研究を行った.平成7年度では,前年度の検討に基づいて,実際に実時間で動作する2チャネル型のリクルートメント補償型ディジタル補聴システムを構築して,両耳効果の期待できる補聴条件を設定し,その有効性について検討した.両耳受聴による音声明瞭度の改善に関する聴取実験の結果,明瞭度の上昇が見られることを明らかにした.また,MLD(マスキングレベル差)が観測される被験者については,両耳のラウドネスバランスを図ることにより,良好な不要音抑圧効果が得られること,及び,音像定位の定位位置の精度を大幅に向上できることが明らかになった.以上の検討により,聴力レベルが左右でかなり異なる場合でも,リクルートメント特性を正確に補償することで,音声明瞭度の改善と,音像定位の総合的な改善を図るという本研究の目的は,かなりの程度達成できたものと考えている。
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