研究概要 |
メントールを出発物質として新たに合成した誘導体の吸収促進活性をケトプロフェンのラットにおける経皮吸収速度を指標として評価した.その結果,エーテル誘導体の活性はエステル誘導体に比較して高く,とくにエチルエーテル誘導体でコントロールの80倍の活性が得られた.エーテル誘導体の促進活性は化合物の疎水性に大きく依存しており,疎水性が強過ぎても,また弱過ぎても著しく低下することから,促進活性を発現する上で促進剤の疎水性に最適値の存在が示唆された. エチルエーテル誘導体に見いだされた強力な吸収促進作用の機構を明らかにする目的で,皮膚の疎水性ルートを経由して透過する薬物としてフルルビプロフェンを,また親水性ルートを経由する薬物としてイソニアジドを選び,これら薬物のin vitro皮膚透過に及ぼすエチルエーテル誘導体の促進活性を比較した.その結果,エチルエーテル誘導体はフルルビプロフェンの透過を著しく増大させたが,イソニアチドの皮膚透過に対する作用は弱く,その活性はメントールとほぼ同程度であった.また,エチルエーテル誘導体はフルルビプロフェンの皮膚への分配に対してはほとんど影響を与えず,薬物の皮膚内拡散を著しく増大させる作用を示した. 以上より,エチルエーテル誘導体の作用発現部位は主に角質細胞間隙の脂質層であり,この部位の構造を変化させることによって優れた吸収促進作用を発現するものと推測された.また,皮膚の組織学的検査から,エチルエーテル誘導体は他の化合物に比較すると刺激作用が弱く,新規経皮吸収促進剤として有望な化合物であると考えられる.
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