研究概要 |
都市高温化の主因である放射場の改変には,遮蔽率のほかに,複雑な素材で構成された都市面構造の放射温度特性が関与している。本研究は、新たに赤外線熱画像装置による面的測定を行うことにより、「都市面構造が都市地表面における放射収支成分の改変に及ぼす影響」を野外観測に基づき厳密に捉え,そのモデル化を行うことを目的としている。初年度の夜間の解析に加えて,日中・夜間を通しての解明を行った。1.観測場所は初年度と同一の東西軸の街路をもつ都市キャニオンである。遮蔽率は約63%であり、日本の中小都市のそれよりかなり大きく,東京都心の密集地域の街路空間に相当する。2.6日間の測器検定を行ったのち,屋上面・地表面に加え、街路樹の存在する地表面の3地点における放射成分,キャニオン構成面の表面温度,気温・風などの昼夜測定を行い,寒候季(約5日間)の晴天・曇天日の資料を収集した。前年度までに実施した暖候季1回,寒候季2回の測定資料と合せて解析した結果,昼間の都市キャニオンでは,夜間と同様にビルの遮蔽効果のため下向き長波放射の顕著な増加はあるものの,下向き短波放射がそれ以上に減少するため放射加熱は著しく抑制(正味放射の減少)される。また,ビル空間に存在する街路樹は,日中の全ての放射成分を減少させ放射加熱をさらに抑制することも判明した。3.都市面構造物の温度特性の把握と,サーモトレーサの有用性を検討するため,4方位面をもつ橋脚(砂岩塊)の表面温度測定(7日間;日向と日影面,含水比による相違が明瞭),鉄筋コンクリートの3階だて集合住宅における暖房効果の検討(2日間;暖房による昇温効果は,壁面よりガラス窓面で大きく,晴天・曇天時とも終日持続するが,夜半前が最大で約4.5℃もある。なお、葉温との差は約12℃にもなる)などを行った。4.この検討をふまえて,第2項に記したビル空間の放射成分観測とあわせて行った熱画像装置による都市面温度の面的測定では,構成素材,場所,暖房効果,天候条件などによる相違が予期した以上に明瞭に検出された。かなり複雑な温度分布を示しており,従来の点的測定による正確な把握は困難であり,熱画像による面的測定の有用性が実証された。ただ、この厳密なモデル化については今後継続して研究していきたい。
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