研究概要 |
本年度の調査としては,郷村・山田断層系,三方断層系,淡路島南部の中央構造線を調べたが,兵庫県南部地震ではこれに関連した地震断層が生じ,課題とまさに符合するので,この緊急調査を実施した。 昭和2(1927)年に奥丹後半島基部付近を震央とした大地震(M=7.3,深さ:0km)が起り,郷村断層帯および山田断層帯で代表される,2系統の明瞭な北丹後地震断層系が現れた.諸文献に記された断層系の諸性質を各地点毎に整理し,現地調査・トレンチ調査成果・室内作業を加えて,地震断層や断層変位地形などについて再考察し,次の事柄が判ってきた.1)郷村断層帯は雁行状に配列する数本の断層からなり,N30°W方向に連なる.陸上部での延長距離は明瞭な部分で約14kmである.2)地震断層はほぼ既存の断層に沿って発現した.既存断層の変位地形はさほど明瞭ではなく,平均変位速度はB級の下位からC級の活断層である.3)郷村断層帯中の個々の断層は,ほぼ中央部に変位量の中心があり,その量は両端部に向かって徐々に減少していく.4)これら個々の断層は他の断層に引き受け継がれて配列している.全体としてみた変位量の分布は,とくに左ずれに関して,郷村断層帯では波状に変化している.5)郷村断層帯全体としては,網野町郷付近を極大値として,両端の方向に変位量を明瞭に減少している.6)北西の日本海海底方向へも延長が推定され,日本海の海底に約4km,ないしそれ以上の延長が考えられる.7)郷村断層の部分では,累積性のある変位地形がよく判り,最大100m程度の河谷や尾根などの左ずれ屈曲が認められる.8)断層活動の間隔は数千年以上であり,1万年に一度程度の長い値をもつ.9)山田断層(帯)は地形・地質的には明瞭な活断層であるにも拘らず,丹後地震時の変位量は少なく,その中央部のごく一部が動いたに過ぎない.10)山田断層は既存の活断層線が大地震で差動的に震動したのであり,この地震発生の結果として誘発されて動いたと考えられる. 三方断層系や淡路島南部の中央構造線活断層系については,調査途時である.兵庫県南部地震の突発的な発生もあり,その緊急性を考慮して,それに伴う地震断層を優先的に調べ,その速報をすでに報告してきた
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