昨年度に続いて気相でのラジカル計測を進め、基板上での膜堆積やエッチングなどの反応過程の境界条件となる物理量として、気相から基板表面へ輸送されるラジカルのフラックスを求めた。具体例として、SiH_2ラジカルやH原子の密度を測定し、非晶質や多結晶のシリコン薄膜の形成機構におけるそれらの役割を議論した。一方、ラジカルの表面反応過程を直接調べるため、高速位相変調フーリエ変換赤外分光エリプソメトリー(FT-IR PMSE)という手法を新しく開発した。その方法を用いてフロロカーボン系のプラズマに晒されたSi基板表面での結合状態を系統的に調べた。気相での測定結果と対比することによって、イオン衝撃支援エッチングが進行している条件では、一定の厚みのフッ化層が形成されており、逆にイオン衝撃の少ない条件では、CF_2を主な前駆体とするポリマー膜が堆積して、エッチング反応を抑制していることがわかった。今回開発したin-situ表面計測法は化学結合状態が高感度に測定できるが、空間分解能が悪いため、ミクロ構造をもつ基板に対しては有効ではない。そこで現在、反射干渉法を利用した新しい表面加工形状の測定法を考案しており、それを併用することによって、サブミクロンの空間分解能でプラズマと表面の相互作用を計測していく計画を進めている。また、表面反応や加工形状に大きな影響をもつイオンの入射エネルギーとその角度分布についても、微細な貫通穴をもつ基板を透過してきたイオンを質量分析する手法で直接測定する実験を進めている。
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