本研究は、(1)ソーラーレーザーの開発、(2)触媒の特性測定、(3)光によりCO_2転換反応の素過程研究などが柱になる。(1)ソラ-レーザーについては、(a)太陽電池による半導体レーザーの直接発振特性から、最大太陽光照度のほぼ1/4でレーザー光強度が飽和に達することを明らかにし、太陽電池の発電能力が太陽光照度に関して飽和する点に改良の余地のあることを示した。(b)上記ソーラーレーザーシステムに蓄電池を組み込み、昼夜にまたがる連続発振が達成できた。(c)ソーラーレーザーの波長変換に関しては、エルビウムを添加したファイバーに近赤外の半導体レーザー光を注入して緑色光への変換を確認したが、変換効率の測定にまでは至らなかった。(d)レーザー光の大出力化には、個々のレーザー光をファイバーで集める方法と、半導体レーザーをアレイに組む方法とがあるが、人工光合成用には、後者のアレイに組む方が実際的であることが分かった。(2)触媒については、従来からCO_2の転換用として用いられているFe_2O_3やCuO、光触媒としてのTiO_2、各種ゼオライト、希土類元素などについて(a)紫外・可視・赤外域の吸収スペクトル測定と、(b)CO_2およびH_2Oの吸着・脱離特性を調べた。その結果、光吸収の点ではFe_2O_3が、また、ガスの吸着・脱離特性ではゼオライトが優れていることが判明した。そのほか、メタノールへの転換効率の高い光触媒として湿った酸化銅Cu_2O・xH_2Oが新たに見つかった。(3)については、反応の素過程と追跡しやすいマトリクス試料に関する基礎研究として、吸光度測定技術を確立し、CO_2のマトリクス試料の紫外から赤外までのスペクトルを測定した。今後は、ソーラーレーザー技術の熟成と、複合触媒の開発、マトリクス試料を用いたCO_2に関する光反応の素過程研究などが重要となる。
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