研究課題/領域番号 |
06452430
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小林 捷平 京都大学, 原子炉実験所, 助教授 (80027466)
|
研究分担者 |
木村 逸郎 京都大学, 大学院工学研究科, 教授 (40027404)
西川 佐太郎 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (60027430)
森山 裕丈 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (90127150)
|
キーワード | 243Am(n,f)反応断面積 / Am-242m(n,f)反応断面積 / ENDF / B-VI / JENDL-3.2 / 鉛スペクトロメータ |
研究概要 |
本年度は、京都大学原子炉実験所に付設される鉛スペクトロメータ(KULS:一辺が1.5mの立方体、総重量約40トン、鉛の純度:99.9%)を用いて、Am-243及びAm-242mの核種を中心に、これらの核分裂断面積を〜0.1eVから10keVの領域において測定した。これには、Am-241とU-235それぞれの電着膜、またはAm-242mとU-235それぞれの電着膜を一緒に背中合わせに封じた核分裂電離箱を用意し、これをKULSのビスマス実験孔に挿入した。実験手法は、従来(Np-237、Am-241の核分裂断面積測定)の場合とほぼ同様である。入射中性子は、精度よく求められている235U(n,f)反応の断面積を用いてモニターし、これを基準としてAm-243およびAm-242mの核分裂断面積を測定した。 まず、化学的に精製されたAm-243試料を用いて実験を行ったが、高純度のAm-243試料であっても、アルファ崩壊によってPu-239が不純物としてAm-243試料中に徐々に生成蓄積されてくる。Pu-239は0.3eVに巨大共鳴を持っており、これが243Am(n,f)反応断面積の測定結果に大きく影響することが分かった。我々はこの効果を実験的に求めると共に、計算による予測式も導出した。本実験においては、Am-243試料を化学的に精製した後数ヶ月で実験を実施すると共に、この間に生成したPu-239の効果を正しく補正することができた。243Am(n,f)反応断面積のENDF/B-VI及びJENDL-3.2の評価値を本実験結果と比較したところ、前者のデータは概して本実験値に近いが15〜60eV領域では明らかに低い。JENDL-3.2データは本実験値に比べ100eV以上で全体に低目の傾向にあることが分かった。 Am-242試料は核分裂断面積が格段に大きいため、少々の不純物なら本実験値を乱すことは殆んどない。また、入手できる試料としては、純度が85%のものに限られたこともあって、我々の場合もこれを用いて核分裂断面積の測定を試みた。実験の手法は、Am-243の場合と同様である。現在、Am-242mのアルファ線、ガンマ線測定の結果を解析中で、その定量は完了していない。そこで、相対測定の結果としてENDF/B-VI、JENDL-3.2のデータと比較したところ、特にエネルギー依存性においては、これらの評価値に近いことが分かった。今後、Am-242mの定量が完了した段階で絶対値による詳細な比較、検討を行う。
|