研究概要 |
電子線型加速器と組み合わせて付設された京都大学鉛スペクトロメータKULSについて、まず、その諸特性を求めた:共鳴フィルター法により(1)中性子減速時間t (μs)とエネルギーE (keV)の関係(ビスマス孔:E=190/t^2、鉛孔:E=156/t^2)、(2)エネルギー分解能(ビスマス孔、鉛孔共に約40%)、(3)飛行時間分析法により中性子スペクトルを測定した。MCNPコードによる計算結果は、これらの実験値と全体によい一致を示した。 次に、このKULSを用いて〜0.1eVから〜10keV領域におけるAm-241, Am-243,及びAm-242mの核分裂断面積を測定した。実験には、これらの電着膜とU-235の電着膜をそれぞれ背中合わせにした核分裂電離箱を用意し、測定結果を^<235>U (n, f)反応の標準断面積に規格化した。Am-241では、Dabbs等の実験値およびENDF/B-VIの評価値は本実験値とよい一致を示したが、JENDL-3.2の評価値は10〜200eV領域において1.2〜2.3倍低い値を示した。Am-243のENDF/B-VIは15〜60eV領域で低く、JENDL-3.2は100eV以上の領域で全体に低くなっている。Am-242mに関する予備的実験では、ENDF/B-VI、JENDL-3.2の評価値に近い結果が得られた。また、Am-241,243の熱中性子核分裂断面積についても、標準熱中性子場において測定した。 最後に、MAに関する中性子捕獲断面積測定として、Arガス入り比例計数管を用いて^<237>Np (n, γ)反応断面積の測定を試みた。本実験では、Np-237試料(〜2mg)からの中性子捕獲事象の計数率が少なく、バックグランドとの比較において有意な違いは得られなかった。
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