研究概要 |
1.人工靱帯用の素材として,ナイロン繊維あるいはポリエチレンテレフタレート繊維を芯糸とし,この周囲に2本のトワロン繊維を鞘糸として螺旋状に交叉させて巻き付けた複合糸を作製した.この複合糸について,生理食塩水浸漬試験,生理食塩水中での疲労試験,ラット皮下埋植試験を行った.その結果,ポリエチレンテレフタレート繊維の周囲にトワロン繊維を1m当たり500回巻き付けた複合糸(PET500)が人工靱帯の素材として有望であることがわかった. 2.PET500に対してコレステロール脂質溶液中での疲労試験および家兎の膝蓋骨-脛骨間への移植による生体内疲労試験を行い,その疲労挙動について詳細に検討した.生体外および生体内での繰り返し変形により,PET500の破断荷重と破断ひずみが減少する傾向が現れたが,剛性は変化しなかった. 3.PET500に対して細胞毒性試験を行い,PET500には細胞毒性が無いこと確認した. 4.PET500を編み合わせて人工靱帯を作成し,その力学的性質を調べた.作成した人工靱帯では,ヒト前十字靱帯よりも破断荷重と剛性が大きいことがわかった.現在,人工靱帯の剛性をヒト前十字靱帯の剛性に近づけるために改良を行っている.さらに,この人工靱帯について生体外および生体内での疲労試験を行い,評価する予定である.
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