本年度は2つの熱水変質帯(青森県上北、長崎県五島)からのイライトと類縁鉱物の粒度分布、結晶形態、および表面トポグラフなどを電子顕微鏡下で観察した。その結果、凝灰質岩石の熱水変質では、イライト/スメクタイト混合層鉱物は渦巻成長機構による成長をしている。しかも成長に伴う結晶形態や粒度分布の変化が泥質岩の続成作用による変化とは異なった傾向を示すことなどが明らかになった。また、イライトとスメクタイトの1:1規則型混合層鉱物であるレクトライトにおいては、他の混合層鉱物とは異なり2層構造を基本とした独自の結晶成長様式で成長していることも明かになった。これらの成果はそれぞれ論文として発表した。さらに異なる熱水変質帯からの試料と比較するために、中国地方のカコウ岩中の粘土脈や北海道登別周辺の変質帯を対象として研究を進めている。また、砂質・泥質・火砕岩質堆積岩中の続成作用での変化を比較するために、フランスの共同研究者から北海の試料、北海道の石油探査のための深層ボーリング試料などを入手し、上記の事柄について比較検討を行っている。 一方で、北海道登別大湯沼底質の研究から、カオリン鉱物においてもイライト鉱物と同様にハロイサイトからカオリナイトへの転移に伴って溶解・再結晶成長作用が重要な役割を演じているらしいことが推定された。このため、イライト鉱物の研究と平行してカオリン鉱物の研究も同じ視点から行っている。このデータの一部は現在論文として投稿準備中である。これらの研究には、当初考えていた電子顕微鏡による観察に加えて迅速粒度分析器の使用が有効であると考え、現在はレーザー回折/散乱法および遠心沈降法による粘土鉱物の粒度分布測定を合わせて行っている。これについても予察的な報告はすでに行い、現在さらに詳細な考察を加えた論文として投稿準備中である。
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