海洋における溶存態有機物の生成過程に関する観測・実験を、海洋科学技術センター所属の研究船「かいよう」(K95-09:1995年10月)および東京大学海洋研究所所属の研究船「白鳳丸」(KH-95-3:1995年11月)の両航海におい実施した。対象海域は、東シナ海縁辺部(K95-09)および北太平洋域(KH-95-3)である。 ^<13>2Cをトレーサーとしたインキュベーション実験は各航海とも水温、栄養塩濃度などの環境条件の異なった数測点において実験した。実験は24時間継続し、実験終了後懸濁態有機物と溶存態有機物は、ガラス繊維濾紙(ワットマンGF/F)を用いて分別した。 全懸濁有機物の生成速度は海域により異なり、貧栄養水域の亜熱帯循環域の200mgC m^<-2> d^<-1>から、沿岸域に近い東シナ海縁辺部の650mgC m^<-2> d^<-1>まで3倍以上の開きがあった。懸濁粒子を形成する有機物としては、脂肪酸の生成量を求めた。脂肪酸では、海域を問わず炭素数14および16の飽和脂肪酸(14:0および16:0)と炭素数16の1不飽和脂肪酸(16:1)の3種類が主要な構成分であった。全脂肪酸の生産量は、全懸濁態有機物の生産量の15-20%程度を占めた。 また、全溶存態有機物の^<13>C同位体比については、過硫酸カリウムなどを用いた湿式酸化法により得られた二酸化炭素中の^<13>C同位体比を質量分析計で測定する方法を試みた。その結果、多少ではあるが^<13>C同位体比の増加が認められ、溶存態有機物の生成が示唆されあ。溶存態脂質を構成する脂肪酸の^<13>C同位体比は、ガスクロマトグラフ/質量分析計により測定した。しかし、本年度の航海で得られた溶存態脂肪酸では、有意に同位体比が増加している試料はなく、溶存態の脂肪酸が生成されている直接的な証拠は得られなかった。
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