研究概要 |
1.液体における分子再配置運動の詳細を解明するための装置として、クライオスタット内の温度環境を長時間不変に保つように工夫した超高精度熱量計を設計、開発した。 2.ガラス形成能が高いことで知られる数種の液体(1,3-ジフェニル,1,1,3,3,-テトラメチルジシロキサン、_0ーターフェニル、プロピレンカーボネート)において、その熱容量測定から、β-ガラス転移を見出した。α-過程はフラジル性mで特徴づけられる非アレニウス的な緩和時間の温度依存性を示し、一方、β-過程はアレニウス的な依存性を示した。両過程の緩和時間は高温で一致し、"β-過程はα-過程の素過程である"ことを強く示唆する結果を得た。 3.α-過程の平均緩和時間の温度依存性に関して非アレニウス性の度合が異なる、グリセロール、プロピレングリコール、1,3-ジフェニル,1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンのα-緩和過程を一定温度条件下で長時間追跡した。その緩和過程を伸長指数関数の非指数関数性パラメータβで特性化し、その結果を温度ジャンプ量Δ_jTの関数として考察した。その結果、液体のフラジル性mと緩和関数の非線形性δ(=dβ/dΔ_jT)の間に強い相関を見出した。 4.固溶体を形成することが知られているフルオレンとジベンゾフランそれぞれの結晶において、ガラス転移を見出した。種々の組成を持つ固溶体について液体の場合と同様にエンタルピー緩和過程を追跡する予定である。 5.超イオン伝導性ガラスである(AgI)_<0.5>(AgPO_3)_<0.5>のα-過程を追跡し、この種の系においても同様に、その緩和関数が顕著な非指数関数性を示すことを見出した。
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