極低温固体内にジエン類と二酸化窒素あるいはアミン類と二酸化窒素の反応ペア-を閉じこめ、可視光誘起の酸素原子移動が610-635nmの赤色光で二分子反応として誘起されることを明らかにした。 二酸化窒素によるジエン類の可視光誘起の化学反応では、(1)励起二酸化窒素からジエン類のπ電子系への求電子的な酸素原子移動によるオキシランビラジカルと一酸化窒素の生成に始まり、(2)オキシランビラジカルと一酸化窒素の再結合によるニトリトラジカルの生成過程、(3)オキシランビラジカルの環化によるオキシランの生成過程、(4)オキシランビラジカルの分子内水素原子移動によるアルデヒドの生成過程に分岐することを見出した。酸素原子の付加する炭素位置には選択性があり、(2)-(4)の各過程への分岐比は反応ポテンシャル局面上での余剰エネルギーに依存した。さらに582nm光照射での各反応速度を測定し、しきい波長および反応性のメチル基置換効果についで考察した。上記の光誘起反応の機構解明、反応障壁の決定、速度論的な反応解析以外に同位体でラベルする手法により反応中間体を赤外分光法で新たに帰属した。 二酸化窒素によるアミン類の可視光誘起の化学反応では、π電子系の分子と同様に非共有電子対を有するアミン類にも励起二酸化窒素から酸素原子が求電子的の移動することを明らかにした。この場合の酸素原子移動は電荷移動型ポテンシャルへの遷移過程で、実際反応誘起のしきい波長はアミンのイオン化電圧と良い相関があることを明らかにした。反応機構として(1)分子間の酸素原子の移動によるアミンN-オキシドと一酸化窒素の生成に始まり、(2)アミンN-オキシドの安定化過程、(3)アミンN-オキシドのイミンと水への単分子分解過程に分岐することを見出した。アミン類への酸素原子移動では生成物として水とイミンが1:1錯体を形成するため単離した水やイミンとは大きく異なる赤外吸収を示すことを明らかにした。
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