研究課題/領域番号 |
06453022
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
梶本 興亜 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30029483)
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研究分担者 |
藤村 陽 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (00222266)
吉村 洋介 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10192428)
原 公彦 京都大学, 大学院・理学研究科, 講師 (80025436)
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キーワード | 内部回転 / 電子移動反応 / 時間依存蛍光スペクトル / クラスター / 超音波ジェット |
研究概要 |
単結合回りの内部回転は、多くの化学反応において重要な働きを持っている。我々は、ビアントラセンと極性分子との錯体を採り上げ、超音波ジェット中のクラスターを用いて、内部回転と電荷移動状態生成反応の詳細な関係を研究してきた。本研究課題では、電子移動反応を含むポテンシャル曲面上でのダイナミックスをピコ秒の実時間で追跡することを目指した。 具体的には、ビアントラセンと水との錯体をジェット中に発生させ、これをピコ秒励起した後の蛍光スペクトルの時間発展を観測した。すなわち、現有のピコ秒チタンサファイアレーザーを用いて、ビアントラセン(BA)-Ar錯体およびBA-水1:1錯体を光励起し、いくつかの波長で各々時間発展を観測した。水錯体の場合、共鳴蛍光にあたる275nmでは励起後約15psの速い減少が、380nmでは50psの減衰時間を持つ減少が見られた。一方、420nmより長波長の発光は50psの立ち上がり時間を持っていた。これらの結果は、Franck-Condon励起状態上げられた分子が10-20ps程度の速い速度で、大きい内部エネルギーを持つ新しい電子状態に移行し、ついで長波長にシフトする発光を出しながら約50psの時間でその緩和状態に到達するものと解釈することができる。また、新しい電子状態の寿命は約20nsであった。Ar錯体の場合には、どの波長においても立ち上がりが見えず、S_1状態からの蛍光のみをみていることになる。 さらに時間分解能良く蛍光立ち上がり・減衰をとるために、アップコンバージョンの手法を検討し初期的実験を行ったが、ビーム実験への適用は非常に難しく、シグナルを得ていない。本年度は液相でのアップコンバージョン実験の追試をして、感度などの改良を試みた後、ふたたびビームでの実験を行う予定である。
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