研究概要 |
1.9-シアノアントラセン(CNA)と1、3-シクロヘキサジエン(CHD)とのシクロ付加体化合物、ならびにCNA、CHDの混合溶液について時間相関単一光子計数法による螢光減衰曲線の測定を行い、それぞれについて計算機解析の結果を比較した。また、クマリン151をアニソール中で励起し、N,N-キメチルアニリンを消光剤とした系についても調べた。螢光とレーザー光との和周波測定法により消光剤濃度10^<-4>Mから1Mまで変化させ、サブピコ秒領域まで螢光減衰曲線を正確に測定した。 この結果、極めて短い時間領域の螢光減衰曲線は、消光剤分子の動径分布関数を考慮に入れて解析する必要があることが示され、溶液中の構造についての議論が出来るようになった。 2.無極性溶媒中でアミノフェニルジスルフィドの光分解により生成するp-アミノフェニルチイルラジカル対のジェミネート過程をピコ秒過渡吸収測定により調べた。 ジェミネート対の過渡吸光度の減衰、および、スペクトル幅の減衰の時定数の温度効果を測定した。初期のスペクトル幅には大きな温度効果は見られなかった。これは光解離により生成した直後のラジカル間距離がこの程度の温度変化では変わらないことを示している。サンドイッチ型のラジカルダイマーはジェミネート対から生成していることを確かめた。ジェミネート対の解離の活性化エネルギーを求めると3kcal/Mとなった。ダイマー生成速度にはほとんど活性化エネルギーは無い。また、スペクトル幅の緩和の活性化エネルギーは約6.7kcalと溶媒粘度の活性化エネルギーに比べてかなり大きな値が得られた。この系ではラジカル間の強い相互作用により比較的近距離にラジカル対を長時間保つことが重要であるが、さらに双極子間の反撥により再結合が妨げられることも加わり以上に示す挙動が観測できたと考えられる。
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