研究概要 |
1.本研究は、多原子分子の高励起状態において「振動運動がどのように周期的運動からカオス的運動へ移行するのか?」また、「その変化をもたらすダイナミックスは何か?」の疑問に答えることを目標とする。 2.この目標に沿って、多原子分子の振動量子準位を高いエネルギー領域まで測定し、その準位エネルギーが基準振動を基礎にして解析し得るかどうかを検討する計画を立てた。本年度は高感度多チャンネル分光器による蛍光スペクトル測定システムを設置し、装置の立ち上げと性能の検証を主要な研究計画とした。 設置した多チャンネル分光器は、25CM分光器(150,600,1200 gr/mmグレーティング付属)とイメージインテンシファイアを2段装着したMOSイメージセンサを有する。分散スペクトルの測定可能領域は、3つのグレーティングの切り替えで紫外可視のほぼ全領域(200-600 nm)から50 nmの狭い領域までの3段階を選択できる。 3.装置の立ち上げと基本性能の検討の目的で、NOのA-X蛍光スペクトルを測定した。すなわち、A^2Σv'=0,J'=1.5の励起準位からX^2II状態の各振動準位への遷移のフランクコンドパターンが再現されること、分解能が理論値の0.2 nmであることを確認した。また、基本的な3原子分子として、NO_2のD^2B_2(0,0,0)状態からの蛍光分散スペクトルを測定し、C^2A_2の振動準位構造を求めることに成功した。NO_2のD状態波、前期解離野ため短寿命で、蛍光量子収率波10-5の桁であるにもかかわらず、蛍光分散スペクトルが測定できたことは、高励起状態の量子準位構造を求める初期の目標達成の基礎を築いたものと考えている。
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