研究概要 |
(1)ホログラム格子(2400grs/mm,適用波長532nm)を持つF/1.8-分光器と現有のNd-YAGレーザー(パルス幅15ns,10Hz)、ICCD検出器、電気化学測定システムを組み合わせて、時間分解ラマン分光器を製作し、所期の時間分解能と波数分解能を持つことを確かめた。 (2)円筒型高屈折率プリズム(Schott glass,n=1.88)にIn_3O_2-電極をスパッター蒸着(膜厚500Å)して時間分解ATRラマンスペクトル測定用液晶セルを製作した。試料としてネマチック相をとる4-cyanao-4′-n-alkylbiphenylを用い,表面配向処理にSiO斜方蒸着法を採用し、液晶のダイレクターの方向を円筒軸に対して垂直と平行の2種類のセル(P-およびS-セル)を作製した。 (3)(2)で製作したセルを用いてS-およびP-偏光励起光について、各ラマン線の入射角度依存性を詳しく測定し、液晶層に光学的異方性を考慮した4層モデルで測定結果のシミュレーションを行い、液晶層(1軸対称性を仮定した)のラマン散乱テンソルの値を決定した。 (4)白金電極を動作電極とするラマン測定用電極セルを製作し、光合成バクテリアから抽出した、バクテリオクロロフィルaのカチオンラジカル(Bchl a^<+・>)の共鳴ラマンスペクトルを、16種類の溶媒を用いて測定し、1600cm^<-1>付近に観測される主としてC_a-C_m伸縮振動によるバンドの波数とラジカルの軸配位(5または6配位)状態との相関関係を調べた。 (5)(4)の結果をもとに、時間分解共鳴ラマン分光法によるBchl aの1電子酸化過程研究のための方法を検討した。
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