臨界状態における電解質水溶液の構造と動的性質

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06453029
• 研究機関: 福岡大学
• 研究代表者: 山口 敏男 福岡大学, 理学部, 教授 (70158111)
• キーワード: 超臨界水 / 電解質水溶液 / X線回折 / 中性子回折 / 高温高圧 / 水和 / 構造 / イメージングプレート

研究概要

1.高温高圧X線試料Beセルの性能は最大673K・400MPa、カプトンセルは最大473K・400MPa、中性子散乱Ti/Zr合金セルの性能は最大673K・200MPaを達成した。
2.イメージングプレート迅速X線回折装置により,高密度(0.7〜1.0g/cm^3)の超臨界水の構造を明らかにした。水の特徴である四面体構造は416K以上の温度で崩壊した。水素結合の数は、常温での3.1から超臨界温度(649K)の1.6まで減少して、非水素結合の数は1.3から2.3へ増加し、総配位数は約4で一定である。臨界温度近傍で水素結合の揺らぎが増大した。得られた構造因子を基に分子シミュレーションの二体ポテンシャルの妥当性を考察した。
3.(^0Li,^7Li)および(^<35>Cl,^<37>Cl)同位体を用いたLiCl重水溶液の中性子同位体置換法により,水の超臨界温度におけるLi^+とCl^-イオンの水和構造(結合距離、配位数,水分子の配向相関)を明らかにした。Li^+の周りの水分子の配向相関は弱くなるが、水和数は変化しない。一方、Cl^-周りの水分子の配向相関も弱くなり、水和数が減少し、Li^+-Cl^-イオン対形成を示した。
4.今後、臨界状態の電解質溶液の構造を解析をすすめるためには、報告がほとんどされていない電解質水溶液の臨界点近傍の物性値(密度や臨界点)を測定する必要がある。

研究成果

• [文献書誌] 伊原幹人: "イメージングプレート検出器を用いた迅速液体・アモルファスX線回折装置の製作と性能評価" X線分析の進歩. 25. 49-60 (1994)
• [文献書誌] 山口敏男: "イメージングプレート迅速X線回折法による高温高圧水の構造解析" 日本結晶学会誌. 36. 382-387 (1994)
• [文献書誌] K.Yamanaka: "Structure of Water in the Liquid and Supercritical States by Rapid X-ray Diffratometry Using an lmaging Plate Detector" J.Chem.Phys.101. 9830-9836 (1994)
• [文献書誌] T.Yamaguchi: "Structures of Water and Aqueous LiCl Solutions in Sub- and Supercritical State by X-ray and Neutron Diffraction" Properties of Water and Steam. (in press). (1995)
• [文献書誌] T.Yamaguchi: "Structure of lonic Hydration in Non-ambient Conditions" Physica B. (in press). (1995)
• [文献書誌] 山口敏男: "高温高圧下の濃厚電解質溶液のミクロ構造" 化学と教育. 42. 817-820 (1994)
• [文献書誌] 山中弘次: "イメージングプレート迅速X線回折法による高温高圧水の構造解析" X線分析の進歩. 26(印刷中). (1995)
• [文献書誌] H.Ohzono: "Chloride Hydration in Aqueous LiCl Solutions at Supercritical Temperature of Water by Neutron Diffraction with lsotopic Substitution" KENS Report.KEK,Tsukuba. 10(in press). (1995)
• [文献書誌] M.Yamagami: "Neutron Diffraction Study on Lithium Hydration in Aqueous Chloride Sotutions at High Temperatures" KENS Report,KEK,Tsukuba. 10(in press). (1995)
• [文献書誌] 山口敏男: "水の再発見-水に対する新しい考え方と実証-" 中根 滋,久保田 昌治,監修,光琳, 334 (1994)