研究概要 |
有機強磁性体の合成研究をi)分子内的手法およびii)分子間的手法により行った. i)擬二次元状のヘキサカルベンおよびノナカルベンのスピンが整列する際に,スピングラスないし超常磁性によると思われる挙動を示したので,それらの性質を極めるためにこれらの前駆体を大量に合成した.ESRでは再現性のあるデータが得られたが,AC-SQUIDでは低濃度における測定感度が極端に悪く,満足できる結果が得られなかった. 一方,蜂の巣状ポリカルベンの部分構造を持つ分枝状ポリカルベンを合成して磁気的性質を検討し,トポロジー的に良い構造でも末端カルベン同志が反応する場合があることを明らかにした.これらの合成手法で重要なアリールエチニルケトンの三量化反応を精細に検討し,その機構を明らかにした.また,構造既知の〔1^6〕メタシクロファンから出発して蜂の巣状ポリカルベンの閉ループ部分構造を持つ環状ヘキサカルベンを合成し,磁気モーメントの測定結果から,2種の分枝状ヘキサカルベンと環状ヘキサカルベンが同一のS=6を示すことを実験的に証明し,スピン多重度がπ結合の周期性により支配されることを結論した. ii)強磁性的な結晶構造を見出すため,(3,5-ジヒドロキシフェニルニトロニルニトロキシドの合成とX線結晶構造解析に続き,m-X-フェニル-,(6-R-2-ナフチル)-,(7-R-2-ナフチル)-,1-ナフチル-,および2-ナフチルニトロニルニトロキシド(X=Cl,Br;R=OH,Br)を合成し,磁化率を測定した。X線結晶構造解析の結果との比較から、ハロゲンのみの違いで全く異なる結晶系となり,一方は強磁性的相互作用を生じることが判った.N-t-ブチル-N-(2-ヒドロキシ-6-ナフチル)アミノオキシルとそのMn(hfac)_2錯体を合成中である.トリフェニレン系では,所定の位置の置換基を修飾する目途が達成できた.
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