本年度はDNAと3重らせんを形成する可能性のあるオリゴマーユニットのデザインに必要な実験を行なった。DNAはヌクレオチド単位が規則正しく連なったポリマーであるから、これを認識させるリガンドも塩基配列に対応したユニットが規則正しく配列し、かつ分子全体のかたちがDNAの溝にうまくフィットするようにデザインされていなければならない。我々は塩基配列に関する情報が豊富であるmajor grooveでトリプルヘリックスを形成させるためには分子の大きさとchiralityが特に重要であると考え、構成単位となるモノマーユニットの分子設計に必要な知見を得るために以下の実験を行なった。 還元剤で1価に還元された銅錯体は、2価に戻るときに分子状酸素を還元的に活性化してDNA切断を引き起こす。銅錯体をプローブとしてchiralityの効果について検討した。銅にフェナントロリンまたはビピリジンがひとつ配位した錯体にアミノ酸またはchiralなジアミンを組み合わせ、これまでにエナンチオマーを含めて11種類の銅錯体を合成した。合成した銅錯体すべてについてDNA切断実験を行ない、chiralityの影響を調べた。円二色性スペクトルを用いた解析も進めており、さらにいくつかの錯体についてはX線構造解析も行なった。また、化合物自体がらせん構造をとると考えられるオリゴ-ピリジル誘導体の銅および銀錯体について、computer graphicsを活用し、エネルギー最小化計算等も行なって立体構造を予測している。これらの知見を統合し、疎水性の効果等も考慮に入れてヌクレオチド認識に必要なリガンドの大きさ、chiralなグループの位置などを適宜軌道修正しながらユニットのデザインを進めている。
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