研究概要 |
我々の一貫した分子レベルでの塩基配列認識機構の解明と塩基配列認識能の高い低分子量化合物の開発研究のなかで、近年3重らせんによるDNA塩基配列認識に着目している。3重螺旋はアンチセンス法と並んで特異的に塩基配列を読むことが期待されるもので、転写阻害による遺伝子発現の制御、DNA複製の阻害が報告されている。しかし,3重らせんの形成はもとの二重らせんの片側がhomo-purine、もう片側がhomo-pyrimidine配列である場合に限られるという大きな制約がある。これを克服し任意の長い塩基配列認識能を有する3重らせん形成のためには、通常のオリゴヌクレオチド以外のパ-ツからできたポリマーを考える必要がある。本研究では、任意の塩基配列を認識することのできる3重らせん形成オリゴマーの設計を試みた。金属錯体のような全く新しい構造単位も有効であるが、その場合スムーズなbackboneの形成が難しくなる難点を克服しなくてはならない。今回はまずbackboneの形成がスムーズに行え、塩基の選択制の高いヌクレオチドの類似化合物から検討した。水素結合のパターン、立体障害、平面性、化合物の安定性、合成のしやすさを考慮して、Cを認識する新規化合物をデザインした。合成にとりかかる前に分子力場計算を行い、新規化合物の塩基配列特異性を確認した。現在合成ルートの検討を終え、合成を開始したところである。さらに、grooveでの結合情報を得るために、誘起CDスペクトルを用いてポルフィリン金属錯体とDNAとのgrooveでの相互作用を定量的に研究する方法を開発した。
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