白金-ジオンジオキシマート錯体は中心金属が鎖状に配列する一次元的な構造をとり、高圧下で絶縁体-金属-半導体転移を示す。これらの機構を明らかにしていくためには低温、高圧下での電気抵抗を調べる必要がある。しかし低温、高圧下でなく磁場を加えることができればより詳しく電子物性が研究できるので、プレスの設計を変更して温度、圧力、磁場の3つのパラメーターを制御できる多重極限装置を作製した。設計変更の関係で装置の作製は少し遅れたが、低温、高圧下での加圧テストも終わって多重極限装置は完成した。温度は1.5Kから室温まで、圧力は静水圧で大気圧から3GPa(3万気圧)まで、磁場は0〜7テスラ-の間で各々独立に可変できる。このように3つのパラメーターを自由に制御できる装置は世界的にもきわめて少なく、一次元金属錯体のみならず多くの物質の電子物性の研究に寄与できる。 白金-ジオンジオキシマート錯体の中で白金-ペンゾキノンジオキシマート錯体は放射光源を用いた高圧下のX線回析の研究から1.7GPa付近で構造異常を発見した。これは絶縁体-金属-半導体転移に密接に関係しており、低温、高圧下の研究結果と合わせ、転移の機構の解明を行っている。
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