研究概要 |
これまで我々は、擬一次元構造を持つ混合原子価錯体[Pd(chxn)_2][PdBr_2(chxn)_2]Br_4(chxn : 1R,2R-シクロヘキサンジアミン)が2価と4価のエネルギー差が小さいことに着目して、^1HNMRスピン格子緩和時間T_1ラーモア周波数及び温度依存性の測定を行い、中性ソリトンに帰属できるスピンの高速拡散運動の存在を示した。 本研究においては、上記のPd錯体と比べて、2価-4価のエネルギーギャップは大きくなるが、より孤立化した一次元系の[Pt(en)_2][PtX_2(en)_2](CIO_4)_4(X : Cl,Br,I)において、ソリトン生成が見られるかどうかに興味を持ち、[Pt(en)_2][PtBr_2(en)_2](ClO_4)_4の^1HNMRを測定した。その結果、鎖上に形成された微量の常磁性Pt(III)が、温度上昇とともに鎖上を非局在して一次元拡散運動することが明らかになった。拡散スピンの担体は中性ソリトンによるものと解釈された。上記のPd錯体と比べるとソリトンの濃度は少ないが拡散速度は大きくなり、一次元鎖間の水素結合などの相互作用がソリトンの移動に影響を与えていることが明らかになった。 同様の測定を、2価-4価のエネルギーギャップが白金錯体より小さいパラジウム錯体[Pd(en)_2][PdBr_2(en)_2](CIO_4)_4ついて行った。その結果、ソリトンの拡散速度は更に大きくなり、報告されているトランス-ポリアセチレンの結果とほぼ同程度の値をもつことが明らかになった.
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