光によるナノ微粒子の凝集分散の制御

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06453058
• 研究機関: 姫路工業大学
• 研究代表者: 木村 啓作 姫路工業大学, 理学部, 教授 (70106160)
• キーワード: 超微粒子 / 光凝集 / コロイド / 凝集分散 / プラズマ振動

研究概要

本研究が対象とするコロイド系は絶縁性有機液体に金ナノ粒子を分散しただけの、いわゆるコロイド安定化剤の全く存在しない分散系であり常識からすると極めて不安定な系である。勿論ナノ粒子のため凝集が直ちに粒子沈降に結びつくわけではなく、また一旦緩く凝集したものは(フロッキュレート)かなりの時間安定で数カ月にわたってゆっくりと沈降していく緩慢凝集系である事が分かっている。しかし光照射による凝集を定量的に測定するためには試料自体は安定な方が勿論望ましい。このため安定な金ナノ粒子コロイドを得るためにガスフロー法において考えられるパラメター:雰囲気ガスの種類、その圧力、流量、炉の温度、トラップ液体の温度等のコロイドの安定性に対する影響を調べた。
ガス種に関してはAr+Heの混合ガスが安定な粒子を発生させる。粒子トラップの温度はできるだけ低温がよい、小さな粒子を与えるには炉の温度が重要で、できるだけ低温で蒸発させること、等が分かった。更に使用ガラス器具はアルカリ洗浄と酸洗浄をきちんと行ない、コロイド作成前に使用する有機液体で事前に洗浄すると安定な粒子系を与える事が分かった。
レーザー照射の予備実験の結果は予想と異なり粒子濃度に依存した全く反対の傾向を与えた。すなわち比較的高濃度下では照射により予想どうり粒子の凝集が促進された。一方溶液を希釈し、粒子数密度を10分の1以下にしたものでは、分散が加速されると思われる結果が可視吸収スペクトルから得られた。これは凝集に臨界の粒子濃度が存在していることを暗示しているがどのような機構の元にそれが可能なのか現在全く不明である。次年度においてはこの全く予想もしていなかった知見を解明するために粒子のゼータ電位などコロイド粒子のキャラクタリゼーションを行ってゆく予定である。

研究成果

• [文献書誌] 木村啓作: "Rate Process of the Coagulation of Nanoparticles" Surface Review and Letters. 2. (1995)
• [文献書誌] 木村啓作: "Photoenhanced van der Waals Attractive Force of Small Metallic Particles" J.Phys.Chem.98,. 11997-12002 (1994)
• [文献書誌] 木村啓作: "Isolation and Agglomeration of Zinc Nanocolloids Observed by ESR Spectroscopy" J.Colloid&Interface Sci.171. 1-5 (1995)
• [文献書誌] 木村啓作: "Photoinduced Coagulation of Au Nanocolloids" J.Phys.Chem.98. 2143-2147 (1994)
• [文献書誌] 木村啓作: "1H NMR Study of Organic Nano-Particles" Chem.Lett.2155-2158 (1994)
• [文献書誌] 木村啓作: "超微粒子の表面-ナノ物質と光るシリコン" 化学. 49. 74-75 (1994)
• [文献書誌] 木村啓作: "コロイド科学I,II,III" 日本化学会, 800 (1995)