シアル酸は糖脂質中にα-グリコシドとして含有される生体の最も基本的な構成成分の一つであるが、そのβ-グリコシドが熱力学的に安定であるため、α-グリコシドを立体選択的に化学合成することは非常に困難な問題とされてきた。我々が既に開発したグリコシル化の手法によりシアル酸とガラクトースの反応を試みたところ、シアロシド供与体の1位の脱離基を炭酸エステルとした場合に反応がα選択的に進行し、対応するα-ガラクトシアロシドを高収率で得ることができた。 次に、広く利用できる触媒的グリコシル化反応についてその効率化を目指して以下の検討を試みた。すなわち、1位が水酸基である糖と遊離のアルコールのグリコシル化反応について検討したところ、触媒量の二価スズトリフラートまたはイッテルビウムトリフラートあるいはランタントリフラート、および触媒量のヘキサメチルジシロキサンの存在下、脱水剤を共存させて1位遊離のリボース誘導体と遊離のアルコールを反応させるとβ-グリコシル化反応が円滑に進行し、高収率でβ-リボシドが生成することが分かった。また、触媒量のトリチル テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートの存在下でも同様の反応が進行し、高収率かつ高立体選択的にβ-フラノシドが生成する。興味深いことに、過剰量の過塩素酸リチウムあるいはリチウム(ビストリフルオロメチルスルホニル)イミドの存在下、1位遊離のリボース誘導体と遊離のアルコールとのグリコシル化反応を行うとβ-リボシドの生成が抑制され、逆の立体配置を持つα-リボシドが高選択的に得られることが明らかとなった。
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