岩石薄片からの放射線作用由来の各種ルミネッセンスのカラー画像化に世界で最初に成功し、照射中、照射直後、照射試料の加熱や光照射による3群について、ルミネッセンス現象を観測し相互に比較検討するとともに、光励起ルミネッセンス観察に有用な事を見出し欧文として報告した。 また、マダガスカル産水晶薄片に放射線を人工的に照射し、アフタ-グローが完全に消えたのを確認した後、ヒーター上で加熱して得られる熱ルミネッセンス(TL)青色TL(BTL)パターンの濃淡が水晶生成時の熱水の状態を反映しており、水晶中に取り込まれた微量な不純物により影響されていることをX-線マイクロアナライザーと中性子放射化分析により確認できた。Al不純物とBTLが負の相関を示しており、一方、電子スピン共鳴吸収(ESR)スペクトルでのAlセンター強度とBTLが正の相関を示すことから、不純物としてAl以外のものの寄与が考えられた。そこで赤外線吸収スペクトルの測定の結果、3300〜3500cm-1付近の水酸基由来の吸収とBTL強度に負の相関を見出した。ついで、液体窒素温度下で水晶粉砕試料をg-線照射しそのままESRスペクトル測定したところ、H原子の吸収スペクトルがAlセンターとともに検出されており、BTLの弱い部分がH原子吸収が強い事を見出した。さらに、液体窒素温度照射試料を一旦室温にまで上昇させ、再び液体窒素温度にてESR測定したところ、H原子の吸収は全く見られなくなり、Alセンターも著しく減少していた。これらの結果から、Al不純物多寡に比例した水酸基が水晶中に存在しており、放射線作用によって生成したHラジカルがAlセンターを減少させるため、Al濃度に逆比例したBTLやカラーセンターを示すと矛盾なく解釈できた。このBTLの線量応答性もAl濃度と密接に関連しており、Al濃度の高い部位ほど線量応答性が低くなっており、先の考察との整合した結果を与えることが分かった。
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