油脂中の遊離脂肪酸の含量は、油脂の品質評価の指標として重要である。その定量法として従前から中和滴定法が広く利用されるているが、計測の効率性、データの信頼性などに難点が指摘されている。そこで、信頼性、実用性、汎用性の高い油脂類の品質評価法を開発することを目的に本研究に着手した。 まず、キノンの電解還元時のボルタモグラムには、脂肪酸が共存する場合に、酸濃度に依存する特異な還元波が出現することを見出した。この事実に基づき、本研究では油脂中の遊離脂肪酸の新規定量法を確立し、広く応用を図った。主な研究成果は次のとおりである。 1.電気化学検出/フローインジェクションシステムの作製と応用 (1)油脂中遊離脂肪酸の定量 まず、グラッシーカーボン電極を作用電極とする電気化学検出器を作製し、次いでこれを組込んだ本システムを完成し、油脂中遊離脂肪酸定量の最適条件を検討した。この結果、25〜1500pmol/testの酸濃度に対して精度よく(相対標準偏差1.4%)定量が可能であり、1時間当り60検体が測定できた。これより、本法は従来法よりはるかに優れていることがわかった。 (2)エステル分解酵素の活性測定 本法の応用としてヒト血清中リパーゼおよびコリンエステラーゼ活性測定を試み、好結果を得た。 (3)食品中の酸成分の定量 一例として、コーヒー豆中の酸類の定量に本法を適用したところ、従来法をはるかに上回る高感度定量法であることがわかった。また、本結果はヒトによる味テスト結果とよく相関するので、食品の品質評価法としても有用と考えられる。 2.電気化学検出/高速液体クロマトグラフィーシステムの作製と応用 ODSカラムに本検出器を組合わせることにより、種々の高級脂肪酸の直接分離・定量を可能ならしめた。
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