研究概要 |
遷移金属窒化物を非磁性マトリックスに均一分散および交互積層して、ナノ複合化した高機能磁性体を見いだす基礎研究を進めた。 1.SiとFeの複合ターゲットを用い、窒素濃度30%以上のスパッタガスで反応性スパッタを行い、Si-Fe-N系アモルファス薄膜を作製できた。EXAFS解析などから生成膜中のFeの局所構造はγ“-FeN_yもしくはγ"′-FeN_yと類似した構造をとっていると考えられた。また基板から剥がして1000℃で短時間熱処理することで、10〜500nmの範囲で粒径を制御したFe_3Siを分散析出させたSiN_y粉末を得る事ができ、粒径20nm付近に保磁力の極大であることが分かった。 2.二元ターゲットの高周波スパッタ装置を用いてFe/AlN積層膜を作製した。両層の厚みはほぼ同じで、全体の膜厚が約1μmになるように積層回数を1、3、8、35とした4種類の試料について調べた。AlN層はX線的に非晶質、Fe層は(110)面に優先配向していた。積層回数が増えてFe層一枚ずつの厚みが薄くなるにつれて、α-Feの格子定数は本来の値よりも膨張し、35周期では1.9%も膨らんでいた。この磁気体積効果に依るのか、膜面に平行に磁場を印加した時の飽和磁化の値が次第に増加していた。またFe層が薄くなるにつれて結晶子径は小さくなった。膜面に垂直な磁場では、約8kOeの磁場でも飽和しない常磁性的な挙動を示し、大きな磁気異方性が観測された。3.窒化物のナノ複合系の基礎として、Mn、Co、Niの窒化物の磁性を調べ、磁気転移温度が、窒化物中の遷移金属がもつ最大の磁気モーメントに対して直線的に変化することを見いだした。 4.磁性金属からなる化合物層の層間に非磁性イオンが挟まれたSrNiN、Ca_3CoN_3、Ln_2O_2CN_2(Ln=La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd)などの新しい層状化合物を得ることもできた。
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