研究概要 |
高機能材料の開発に当たって、従来にない化学組成あるいは結晶構造を持つ新物質の探索と併せて、物質の微粒化やナノオーダの複合化が重要となってきている。磁性体においては特にこの傾向が強く、磁性粉体の粒径制御あるいは磁性体薄膜と非磁性体薄膜との積層磁性膜などの超軟磁性あるいは超硬磁性を目指した研究が、その重要性を増してきている。また近年、飽和磁化が大きく耐食性や機械的強度に優れている窒化鉄が磁性体として注目され、窒化鉄素磁性体がベースにした複合膜あるいは分散膜が磁性金属や酸化物磁性体複合膜と同様に興味が持たれてきている。 本研究では、主として熱的非平衡反応プロセスの一つであるスパッタ法、ならびにイオン注入法を適用して、非磁性マトリクッスとして採用したSi_3N_4またはAlNとFeとの分散系複合膜、ならびにAlN/Fe多層積層膜を作製し、膜の微細組織と磁性、多層膜における界面状態と磁性などの関係を検討した。この結果、AlNやSi_3N_4の非磁性マトリックスからごく少量の窒素を貰い、かつα-Feのbccパッキングを保った成分によると思われる、α-Feよりも約20%も飽和磁化の大きな磁性体が得られた。さらに、既知の窒化鉄相以外の金属窒化物の探索においては、大きな磁気能率を持つ希土類元素の酸化物を還元窒化することによって、Ln_2O_2層とCN_2分子量が積層した結晶構造をとる新化合物が見い出された。またアルカリ土類窒化物と第一遷移金属窒化物との複合窒化物系A-M-N(A:Ba,Sr,Ca, N:V,Cr,Fe,Co,Ni)では、ANiNおよびA_3MN_3の化学組成を持つ新化合物を合成する事ができた。これらにおいては-Ni-N-Ni-N-の一次元鎖やMN_3^<6->(M:V,Fe,Co)錯イオンがア形成されており、結晶構造の違いに関係なく、いずれの化合物も単一遷移金属窒化物の分解温度に比較して遙かに高い1000℃の温度においても安定であった。
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