研究概要 |
本研究の成果を以下に要約する。 1)n型高伝導性ワイドギャップ酸化物の設計指針の確立。電子の高易動度をもたらす結晶構造に対する必要条件として、A.(n-1) d10s0電子配置をもつp-blockイオンを主成分とする複酸化物を選択する。B.p-blockイオンの酸素多面体が稜共有の直鎖を形成していること。この直鎖は電子伝導路を形成する。C.望ましくは、ド-ピングサイトとしてカチオン空孔を有すること。このサイトは、過剰カチオン導入のサイトとして働く。 2)以上の仮説からスピネル構造を選択し、MgIn204,CdGa204,ZnGa204に対し酸素空孔から伝導電子を導入できることを見出した。これらはすべて3.5ev以上のバンドギャップをもつため、可視光領域では透明である。 3)イオン注入ド-ピングの成功。MgIn204スピネルスパッタ薄膜に対しリチウムあるいはプロトンを注入し、伝導率を11ケタにわたって変化させることに成功した。これは、酸化物に対して典型半導体と同様の原子価制御が可能であることの初の実証である。 4)そのほかパイロクロア構造複酸化物に関し、数種のワイドギャップ伝導性結晶を発見した。 5)s0-s2系混合原子価酸化物の発見。T1+,Pb2+,Bi3+などの複酸化物結晶に対し過剰酸素の導入を行った。その結果、これらの一部が酸化され(s0イオンとなる)、s0-s2混合原子価状態が生成した。これらは特有の光学吸収帯を与えることを見出した。
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