今年度は複数のニューラルネットワーク(NN)を導入することによる化学プラントの進化を目的として、以下の研究を行った。 1. ニューラルネットワークの分散協調化 化学プロセス制御を、ニューラルネットワークの持つ学習機能を利用して行うものである。制御結果をニューラルネットワークに学習させることで、制御対象プロセスのモデルが自動的に生成されるため、良好な制御結果が得られるものである。本研究では特に、他変数プロセスに対して複数の小さいネットワークを協調動作させることで干渉を含むプロセスにも有効なニューロコントローラが提案できた。 2. ニューラルネットワークの特性向上に関する研究 ポリスチレン塊状重合プロセスにおいて、不安定領域での状態認識器をPENNを用いて生成した。プロセスモデルの生成時に利用するグローバルポリシ-を数学的近似モデルより得ることによって、変数全域に渡るポリシ-を得ることが可能になった。さらに、生成した状態認識器を制御に用いることができた。制御方法としては順モデルと逆モデルについて行い、両方の方式でも良好な制御結果が得られた。 3. 分散協調を支援するスケジューリングに関する研究 化学プラントが大規模になるにつれて、組み合わせ最適化問題として定式化される問題が生じてくる。ジョブショップスケジューリング問題はその典型例であり、効率良く実用的な好適解を得ることで、生産性の向上、エネルギーロスの低減が可能となる。このような最適化問題を効率良く解く方法として、遺伝的アルゴリズムに注目して既存の方法より探索能力を高め、さらに機械的探索の利点を取り入れた方法を提案した。
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