研究概要 |
本研究は機能性材料の命でもある相互促進効果(シナジ-)を分子論的に解明することを目的として、特殊なキレート剤、金属錯体、金属イオン、ゼオライトなどを組み合わせて、定比組成で一定サイズの複合金属クラスターを合成し、この手法によって合成された定比複合クラスターを用いて、これまで不明であったシナジ-の原理を分子レベルで解明を試みる。 触媒調製時にある種のキレート剤をモリブデンとコバルトの塩に共存させると、相互促進的に作用するサイト(活性点)がほぼ選択的に形成される。今年度は、種々のキレート剤について検討したところ、これまで報告されているTNA(ニトリロ三酢酸塩)以外にもEDTAが有効であることが明かとなった。また、このサイトの活性は使用前に施される硫化・還元等の前処理の条件に強く依存することを明らかにし、チオフェンの水素化脱硫反応などに特異的な高活性を示す最適条件を見いだしている。特に硫化に先立ち、焼成処理を施すことによりキレート添加効果がおよそ半分まで低下する。キレーションの状態についてその場観察として、担持前の溶液状態をNMR,EXAFSにより観察したところ、モリブデン単独の塩の場合には明確なキレーションが認められた。しかしながら、モリブデンとコバルトの塩を共存させるといずれの手法でもキレーションが観察されなかった。そこで、構造の明らかなモリブデン二核錯体をモデルに用い、これらのキレート錯体を種々のゼオライトケージ内で安定化し、サイズの異なるクラスターを得るための手法について検討した。入り口細孔径に近い比較的大きなモリブデン二核錯体の場合、細孔内に導入できる手法は限られている。分子径の大きな溶媒を用いて外表面の錯体のみを選択的に除去することにより、細孔内の錯体についての各種分光学的知見を得た。
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