本研究では機能性材料の命でもある相互促進効果(シナジ-)を分子論的に解明することを究極の目的として、特殊なキレート剤、金属錯体、金属イオン、ゼオライトなどを組み合わせて、定比組成で一定サイズの複合金属クラスターを合成し、この手法によって合成された定比複合クラスターを用いて、これまで不明であったシナジ-の原理を分子レベルで解明を試みる。これまで、触媒調製時にある種のキレート剤をモリブデンとコバルトの塩に共存させると、相互促進的に作用するサイト(活性点)がほぼ選択的に形成され、ベンゾチオフェンの水素化脱硫反応などに特異的な活性を示すことを明らかにしているが、平成7年度においては同様の効果を示す新たなキレート剤を発見した。さらに、活性促進のメカニズムについて配位不飽和サイトの情報が得られる吸着NOのFT-IR測定、活性点の局所構造にかんする知見の得られるMo-K-cdgc EXAFS、により検討した。その結果、キレート剤の添加により、硫化後の作用状態において、表面に露出したCoの割合が増加しており、また活性点の支持構造体と目されるMoS_2クラスターの結晶子サイズも増加していることが明らかになった。活性点の形成には高度に分散したCoの存在が不可欠であることはこれまでも指摘されてきたが、このキレート剤の添加により活性点近傍の構造を大きく変えることなくCoの分散性のみ向上できる可能性が示された。これらのキレート剤を含む錯体のゼオライトケージへの取り込みについてはモリブデン錯体単独の場合には手法的に確立したが、キレート剤ならびにコバルトが共存した場合については十分確立しておらず、ケージ内での複合キレート錯体の生成を確認中である。
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