1 昨年度の研究成果をふまえ、メタノール、一酸化炭素、酸素からジメチルカルボナ-ト(DMC)酸化カルボニル化反応によって合成する触媒の改良と反応操作の改善を試みた。 (1)活性炭(武田製薬、白鷺)に各種の銅塩類水溶液と、助触媒としてLiCl水溶液を、それぞれ含浸させたのち蒸発乾涸して触媒を調製し、固定床高圧流通式触媒反応装置を使用してその活性、選択性を評価した。反応条件は温度120℃、圧力5kgf/cm^2G、W/F2.4g・h/molを標準とした。触媒活性は反応時間の経過とともに次第に向上し、十数時間でほぼ安定する例が多く、定常時の活性、選択性を評価した。塩化銅、酢酸銅、硝酸銅いずれを出発物質としても、活性発現時期に差はあるが定常活性に大差はなかった。銅担持量2.5wt%まではDMC生成活性の増加が認められたが、担持銅原子あたりの活性は低下した。適量のLiCl添加は活性増大の優れた助触媒効果が認められた。Cu塩-LiClを活性炭に担持するときの調製条件について、平衡吸着法、ポアフィリング法、担持量、担持順序などを検討した。担体としてNaX型ゼオライトを用い銅2価イオンを担持した触媒は低温では殆ど活性を示さないことから、活性炭の優れた担体効果が確認された。 (2)最適合成反応条件を探索するため、DMC生成速度に関する活性化エネルギー、CO分圧依存性などの操作条件の影響を明らかにした。これらの知見を踏まえて、メタノールと二酸化炭素(一酸化炭素混合物系を含む)からのDMC合成反応を高温条件下で試みたが、DMC生成量は痕跡程度に止まったので、現在メタノール合成触媒との複合化などを検討中である。 2 今年度完成した実験装置を使用し、DMCの高温熱分解及びプラズマ熱分解実験を行い、それらの反応生成物を詳細に分析した。熱分解反応は約650℃から始まり、700℃以上で著しく起こり、活性化エネルギーは約52kcal/molである。メリル基、メトキシ基、酸素原子などの発生を含むDMCの単分子分解とそれに引き続くDMCまたは共存炭化水素の水素引抜き反応と誘導熱分解の機構、またそれらの温度による変化を推定し、DMCの炭化水素燃焼反応への寄与の機作を考察した。
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