研究概要 |
現在精密合成試薬として工業的に用いられ、将来は輸送機関燃料配合剤として大量に使用される可能性のある、ジメチルカルボナ-ト(DMC)を一酸化炭素、酸素(或いは二酸化炭素)を用いてメタノールの酸化カルボニル化反応によって合成する触媒系を開発するとともに、その熱分解反応挙動を研究しガソリンのオクタン価向上剤や軽油の燃焼促進剤としての作用機構を明らかにした。 1 加圧連続流通式反応装置を制作し、試作した触媒の活性、選択性を評価した。 2 触媒は担体として活性炭、ゼオライトを、金属塩類として銅、パラジウム、錫等の塩化物、酢酸塩、硝酸塩を用い、助触媒としてリチウム、カリの塩化物を平衡吸着法或いはポアフィリング法により含浸させ、真空脱気、乾燥した後に使用した。 3 標準反応条件は120℃、5atm g,CO:Air:MeOH=3:1:1とした。 4 触媒活性は反応開始後数時間にして発現し、10数時間を経たのち安定し、その定常的な活性、選択性を評価した。 5 主反応生成物はDMCであるが、他にギ酸メチル、メチルエーテル、ジメトキシメタン等が僅かに生成した。また一酸化炭素の二酸化炭素への酸化が起こった。 6 触媒調製に用いる銅塩の種類により初期活性に差が見られるが、アルカリ塩化物を助触媒とすれば、定常活性には大きな差は認められない。助触媒としてはLiClが一酸化炭素の酸化を促進しない点でKClに勝る。標準条件下での最大活性は活性炭担持Cu(塩化銅)^+LiCl(各2.5、0.27wt%、等モル)触媒で得られ、DMC生成速度は6.6m mol/gcat hを与えた。ゼオライト系触媒は低温活性が認められず、活性炭の優れた担体としての作用が確認された。 7 上記の触媒はいずれも二酸化炭素を原料とするDMC合成には活性を示さななかった。現在、高い反応温度条件でメタノール合成触媒との複合系反応を試みている。 8 DMCの高温熱分解及びプラズマ分解実験装置を制作し、実験を行った。生成物を詳細に分析し、メチル基、メトキシ基、酸素原子などを発生するDMCの単分子分解反応とそれに引き続く遊離基連鎖的分解反応の機構を推定し、オクタン価向上剤や完全燃焼促進剤としてのDMCの作用機構解明を考察した。
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