エチルベンゼンの脱水素によるスチレンの製造をより低温で効率的に行うため、原料の希釈剤に、二酸化炭素を現行の水蒸気の代わりに用いる方法について研究した。触媒として活性炭に担持した鉄触媒が高い活性を示すことを見いだした。 鉄として5wt%担持した活性炭を触媒に用い、550℃で反応を行ったところ、30-40%の軟化率でエチルベンゼンは反応し、スチレンの選択性は90%以上に達した。この反応を二酸化炭素を用いずに、不活性ガス気流中で行うと、軟化率はほとんど変わらなかったが、選択性が著しく低下し、多量の炭素が析回するのが認められた。鉄触媒の担持量の影響はあまりなく、2-20wt%の担持量でほぼ同じ軟化率を示したが、選択性は高担持率側で低下する傾向を示した。触媒活性および選択性を向上させる目的で種々のアルカリ金属またはアルカリ土類を添加したところ、Li塩の添加が活性、選択性、触媒活性の持続に対して効果を示したが、他のアルカリ金属、アルカリ土類には効果がなかった。Liの添加によりリチウムフェライトが生成していることがX-線回折により確かめられた。 種々の処理を行った触媒のX-線回折より、二酸化炭素の役割は触媒の鉄の酸化状態をマグネタイトに保つために作用していることが分かった。原料のエチルベンゼンはマグネタイト上で脱水素され、スチレンを生成し、同時にマグネタイトは還元され鉄になる。鉄は二酸化炭素により酸化されマグネタイトに戻り触媒サイクルは完結する。これらのことは生成物にスチレンとほぼ等量の水と、一酸化炭素が生成したことから推察された。 また、この触媒系はシクロヘキサンやイソブタンの脱水素にも高い活性を示すことが認められた。
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