研究概要 |
本研究は2年の研究期間で微重量熱天秤による酸化物試料中の酸素濃度測定装置の整備を行い,酸素に微量のCO(あるいはNOx)を含む非平衡混合ガスが触媒(La_<1-x>Sr_xCoO_<3-d>あるいはLa_<2-x>Sr_xCuO_<4-d>)表面に接したとき,そこで起こるCO酸化あるいはNOx還元反応に伴い触媒酸化物中の酸素濃度がどの様に変化するかを測定することを目標とした.然るに,初年度前半に申請者が横浜国大から現職場に移動となり,当初計画で既存設備としていた装置が利用できなくなり,特に,熱天秤系とその周辺機器の全てについて新規購入作製が必要となったため,研究の進め方は当初計画と可成り異なるものとなった. 即ち,熱天秤系の作製と平行して,申請者の元所属した横浜国大の研究室との共同で導電率の変化から固体内の不定比的な酸素濃度変化を考察する手法を検討した.この研究は酸素に微量のNO_2ガスを含む場合を中心に進められ,La_2CuO_<4+d>,La_<0.5>Sr_<0.5>FeO_<3-d>,SrTiO_3において,何れもの微量NO_2分圧の変化によって雰囲気酸素分圧が実効的に数桁上昇したことに相当する導電率変化が認められた.この変化は緻密体・単結晶の方が多孔体より顕著であり固体内不定比酸素濃度が平衡論から予想される値より大幅に酸化側に変化したことを示している. 熱天秤系は本年度後半に漸く測定可能な段階に整備が進み,酸素中に微量のCOを含むガスが接したときのLa_<0.9>Sr_<0.1>CoO_<3-d>の重量変化の測定を単結晶試料を用いて開始した.現在までのところ,900℃で10%程度の酸素を含む系にCOを数百ppm〜数%導入することにより不定比酸素量の還元側への変化を示す若干の重量減少が観測されているが,表面でのCO酸化反応により試料の酸素不定比量が熱力学平衡によって決まる値よりより更に還元側の値を示したことによるものであるか否か,その結論を出せるには至っていない.
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