研究概要 |
1.六方晶カリウムタングステンブロンズ(K-HTB) タングステンと過酸化水素との反応により過酸化ポリタングステン酸(H-PPTA)が得られるが,そのH-PPTAに臭化カリウムを作用させて合成した塩(K-PPTA)を500℃で還元焼成することによりカリウムタングステンブロンズ(K-HTB)の合成が可能となる。このK-PPTAは,Magneli法によるものとほとんど同一の結晶構造を有しているものの、前者に対してのみ、水蒸気雰囲気下に曝すと導電率の大きな低下(2〜3桁)が見られ、しかも水蒸気濃度の変化に対して可逆的に振る舞う。低温合成によるK-HTBには特異的な欠陥が導入されるためと推定された。水蒸気分圧変化による重量変化の測定から、水のサイトには結晶粒の界面と、結晶中の層間の二種類あることが判明した。層間に水が侵入すると、ステージングを起こし、長周期構造が出現することも判明した。複素インピーダンス測定結果の解析により、導電率変化に大きく寄与するのは層間ではなく結晶粒界面の水であり、導電パスの連結及び切断が生じるというモデル(ボンドパーコレーション)で説明が可能と推定される。現在、詳細にメカニズムを検討するとともに、水蒸気センサーへの応用の観点から研究を進めている。 2.鉛タングステンブロンズ及びバリウムタングステンブロンズの電気・磁気的性質 上記と同様の手法を用いて、臭化カリウムを臭化鉛に代えると、新規な化合物である六方晶の鉛タングステンブロンズ(Pb_xWO_3)が合成される。硝酸バリウムまたは臭化バリウムを用いることにより、合成例の少ないバリウムタングステンブロンズ(Ba_xWO_3)を合成し、リ-トベルト法により構造の精密化を初めて行った。Ba/W組成比及び焼成温度と得られる結晶構造との関係を相図の形にまとめた。 抵抗率及び磁化率の温度依存性をxの変化とともに調べた結果、Pb_xWO_3及びBa_xWO_3ともに、六方晶相は半導体、正方晶は金属的な挙動を示すことが判明した。
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